ボクシングサイエンス その5 慣性力1

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関節の加速

慣性力

前回並進運動に起因する回転運動について説明しました。
今回は上記の運動をより理解する為に必要で且つ人体の運動に不可欠な慣性について説明したいと思います。
ここから数回に渡って慣性ついての話が続き、力学的な話が少し長くなります。

ボクシングサイエンス その4 並進運動と回転運動
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まずは慣性について。

慣性
ある物体が外力を受けないとき、その物体の運動状態は慣性系に対して変わらないという性質を表す。

Wikipedia

※慣性系については必要になれば追加で説明しますが今は無視してかまいません。

つまり慣性とは静止している物体は静止し続け、運動している物体は運動し続けるという運動の法則です。
ここで注意が必要なのが運動している物体は外力(空気抵抗や摩擦)を受けない限りは慣性により動き続けるということです。止まっている物体に働く性質だけが慣性ではありません。
そしてここで言う動き続けるとは「等速直線運動」のことで一度力を加えて、他に外力が存在していないのなら同じ向きと同じ速度で動き続けるということになります。
例えば同じ速度でも曲がって進む向きが変わったり加速したりする運動は加速度運動になります。

外力:文字通り物体の外側から加えられる力。例えば人がボールを放り投げたときにボールを動かす力のこと。
等速直線運動:同じ速度で真っすぐ進んでいく運動

これがなんの役に立つんだと感じると思いますが、この慣性と重力が体のバネを働かせるのに重要な意味を持っています。

物体の運動方程式

慣性の部分で記述したように静止した物体を動かすには外側から力を加える必要があります。
この時物体を動かすのに必要な力を数学で表現すると以下の式になります。

F = ma

ある質量の物体mにFの力を加えるとaの加速度を持つという意味にもなります。
別の見方をすれば同じ力を加えるなら質量が小さいほうが大きな加速度を持たせることができ、また質量が大きいと動かすのが大変になるといえます。
この質量の動かしにくさが慣性です。

慣性力

今度は慣性力です。
これは見かけ上の力のことで実際には存在しませんが存在すると仮定されます。
少しややこしい部分です。

下記の図を見てください。
Aさんは止まった電車の外から振り子を見ています。
Bさんは電車の中から振り子を見ています。

電車が発進し右側へ徐々に加速して動きはじめます。
Aさんから見ると電車が動いているだけで小球は慣性によりそれと電車を結んだ紐に引っ張られるまで止まっています。
電車が右側へ動いているだけなので当然です。
しかし加速する電車の中にいるBさんから見ると振り子の小球に力が加わって左に引っ張られているように見えます。
実際には小球は慣性によりその場に留まろうとしているだけで力は一切加えられていません。
このように電車に乗るBさんから見た左向きの見かけの力が慣性力です。

今度は「等速直線運動」する電車を急停止させてみます。
Aさんからみると慣性により動き続けようとする小球が紐に引っ張られ静止させられただけです
しかし電車と一緒に運動しているBさんには静止していた振り子の小球が電車の急停止と同時に力を受けて右に動いたように見えます。
が、そう見れるだけで実際に力を受けてはいません。

身近な場面で例えると電車や自動車に乗っている時に急発進や急ブレーキ、急な方向転換によって体を押される感覚を覚えることがあるはずです。
これが慣性力です。
厳密さを求めれば、慣性力とは実際には存在しない質量を持つ物体だけが感じる見かけの力のことです。

実は遠心力もこの慣性力の一種で、台風の進路を曲げている「コリオリの力」と呼ばれるものも見かけ上の慣性力になります。
存在していない見かけ上の力だと言われても違和感を覚えてしまいますよね。

ないと言っても無視することはできない、物体の運動を理解するのに避けては通れないのが慣性力なのです。

前回の記事で説明した並進運動に起因するトルクに慣性力が働いているのを何となく理解していただけたでしょうか。

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