エマニュエル・ナバレッテ
ナバレッテvsドグボエ
ナバレッテが2度も返り討ちにしたドグボエ。
私はドグボエのファンです。
ドネアを苦しめたタフガイセサール・フアレスをKO、そして続く試合で難敵ジェシー・マグダレノに逆転KO勝ちしています。
マグダレノは高性能なスピードとパワーをやり難さに生かした元王者。これでドネアにも勝っています。
「ドグボエの正直なボクシングでこのマグダレノに勝つのは難しいのでは」
そう考えていました。
そして案の定ドグボエは初回から猪突猛進、マグダレノにダウンを奪われました。
「やっぱりか」
そう思いました。
しかしここからが普通じゃない。それがドグボエです。
ダウン後に徹底抗戦、4回にマグダレノからダウンを奪い返しました。
そして11回マグダレノをコーナーに釘付けにして滅多打ち。
マグダレノは膝を突いたところでレフェリーに助け出されました。
狡猾で頭脳的な難敵、マグダレノが罠を張り巡らす牙城の正門。
そこを突破し首を討ち取る。
シンプルでスカッとしました。
その後しぶとい日本の大竹を初回粉砕。
軽量級のスター誕生を予感させました。
しかしそこへ突如として現れたのがメキシコの怪人ナバレッテ。
なんとこのメキシコの怪人はドグボエを一度ならず二度も踏み台として利用します。
ナバレッテの底知れない体力
ナバレッテはKO率は高いが、負けがある。
典型的な王者になれないタイプの強打者かと思いました。
ドグボエはこれまでのように突進。
とにかく前半飛ばして中盤はオリンピック出場の技術でしのぎ、また後半逆襲するというのがいつものパターンです。
つまり長丁場のマラソンでスタートダッシュを切るようなもの。
ただドグボエの瞬発力です。普通は誰も着いてこられません。
しかしナバレッテは違いました。
着いてくる。ナバレッテは平然とこのハイペースに並走。
顔色一つ変えずに。
いや、それどころか全力疾走するドグボエに並走し、その顔色を窺う余裕すら感じさせます。
ドグボエはペースを上げるもナバレッテを引き離せない。
お互いにビッグパンチは交換しています。しかし目に見えて消耗していくのはドグボエ。
ど根性のドグボエが気力でもナバレッテに押され、憔悴しながらもなんとかゴール。
ベルトを奪われました。
2戦目では自信を深めたナバレッテがドグボエの心身を砕きました。
マグダレノを沈め、大竹を初回で粉砕したドグボエを完全に打ちのめしたナバレッテの怪物性に心を奪われてしまいました。
そしてドグボエ戦のナバレッテに感じたのは底知れぬ体力だけではありません。
ナバレッテが倒してきたドグボエやサンティシマのパンチには、一切の甘さはありません。
当然、当たれば倒れます。
しかしナバレッテはそのパンチへ散歩にでも行くような平然さで飛び込んで相打ちします。
狂気。
相手はその狂気に怯み、後手にならざるを得ません。
さらにナバレッテから感じるのはそれだけじゃありません。
狂気の中にある冷静さ。
ドグボエ戦では体力を失う前に攻撃を切り上げる、休むラウンドと攻めるラウンドを使いわけるなど平静さを失うことはありませんでした。
ナバレッテは滅茶苦茶に攻めているようでこれまで最終回までガス欠を起こしたことがありません。
相手の消耗具合、そして自分の体力、残りのラウンド。
きっちり頭の中で計算を行っているのです。
この相反する性質が共存する気味の悪さ。
井上とナバレッテ
加えて超変則的な「ナバレッテ拳法」。
一流選手程その能力は特化していきます。
ボクサーと戦うことに特化しているボクサーが蹴りに対応できないように、ナバレッテの拳法の変則的な動きに意表を突かれ隙が生まれます。
そこへあの強打です。
「変則と強打」
内藤大助がそうであったように、ナバレッテの強打と変則的なボクシングの相性は高く見えます。
ナバレッテは周辺階級のビッグネーム、井上尚弥、ルイス・ネリを挑発しています。
井上の名は同じトップランクのESPNで試合をしているのもあって、よく口にしています。
日本の怪物vsメキシコ人の怪人。
多分オッズはナバレッテ有利。
コメント